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韓国料理ア・ラ・カルト

骨付カルビは江戸時代にもつくられていた
調理法もタレも現在とほぼ同じだった
接待料理に使う豚と各藩の対応

調理法もタレも現在とほぼ同じだった

焼肉の王様は何といっても骨付きカルビ。その骨付カルビが日本で、それもまだ肉食禁止の時代の江戸時代前期に調理されていたことが分かった。これは1711年と1636年の記録で明らかになったもので調理したのは各藩で、朝鮮通信使の人たちへの接待料理として提供されていた。

朝鮮通信使とは、鎖国政策をとっていた江戸時代に、唯一国交を持っていた朝鮮から将軍の代替わりなどのたびに高官や文人、学者らからなる総勢500人前後が派遣された、その一行のことである。一行は、対馬から瀬戸内海、大阪、京都などを経て江戸までやってきたが、各宿泊先では各藩が接待料理を提供、通信使からは大陸の進んだ文化や学問が持ち込まれ、当時の高官や知識人だけでなく、一般庶民もが大歓迎して迎えた。朝鮮通信使は合計13回やってきたというから、迎える方の各藩の財政負担は相当なものだった。後に、新井白石が通信使を廃止するよう建議したことからもそのことは分かる。

さて、骨付カルビだが、文献では「カルヒ」と記されている。韓国では今でもカルビといえば、骨付カルビのことを指し、食べ方はタレに漬け込んだものを焼くヤンニョン(薬念)カルビと、生の肉をそのまま焼いてごま油と塩のタレで食べるセン(生)カルビがある。江戸時代の接待料理では、前者のタレに漬け込んだ調理法でつくられ、一つの長さ、肋骨についた肉(韓国語でカルビ)に切れ目を入れること、味付けに油と醤油を使うことは現在とほとんど同じだ。この料理は「百味もこれには及ばない」とあることからも分かるように、当時の日本人にも骨付きカルビが、いかにおいしいものであったかが分かったようだ。

牛肉の料理では、このほかに赤身肉を小串に刺して油としょうゆで味をつけて焼いたもの(これは今でも韓国の家庭で料理する)が紹介されているほか、大・小腸、肝臓(レバー)を焼いたり、生のまま酢醤油で食べるように提供する方法も記されている。

面白いのはセンマイとその食べ方。センマイは「百葉」と記されているが、これは「千葉」のこと。ひだが無数にあることから韓国ではもともとは「千葉(チョニョプ)」といったが、それが後に漢字の「千枚」になり、現在の「センマイ」になったもの。

食べ方は辛子、酢、しょうが、にんにくなどを混ぜたタレをつけて食べるとなっており、現在の生センマイの食べ方とほとんど同じだ。

牛肉をこのようにして料理した当時の各藩の人たちは、朝鮮の人たちが肉を、それもこれほど多様に調理して食べることに驚いたであろうが、焼いているときの匂い、そして味見したときのおいしさから、きっと「自分たちも、こんなおいしいものが食べられたらいいのになあ〜」と思ったことだろう。

接待料理に使う豚と各藩の対応

豚の取扱いに関して、当時の日本人は全く知らなかったが、そのことを物語る記録が彦根藩の文書として残っているので、参考までに現代文に直して紹介する。

「高麗人のご馳走のため、生きた豚15匹を(平戸藩)松倉長門殿の御在所でととのえていただき、大阪の江戸堀川にある長門殿の蔵元で、その主人である有馬屋九郎次郎という人物に、材木屋孫左衛門が逢い、長門様から豚が届けられたら、彦根藩にお渡しいただき受け取る約束になっているので、渡し次第に孫左衛門方で受け取り、船で伏見の六地蔵へ送り、布下所へ連絡して大津へ車に積むか、馬に付けるかして取り寄せ、彦根へ船で運ぶように申し付け、彦根に到着したら朝鮮人通使に豚があるので、こちらのものは料理できないから、各々料理をお好み次第になされるよう申し付けなさい。豚は多数あるので、下々まで食べるようにするのがよい。

豚が逃げないようにもがり(竹の柵)を結い廻して入れて置き、餌、その他何でももがりの内に取り込んで喰わせるように申し付けよ。

飼い方は、きっとそちらにも存じているものがいるので、また町で放し置いても構わないので、そのように申し付けなさい。豚を運ぶ際には、菰に頬・足・手を出して包み、馬に付けてか、車に積んでかして運ぶように申し付けること」

通信使への気配りがよく分かるが、豚の運送方法や飼育の方法などに関する記述は、実に興味深い内容で、当時の日本人が豚を飼ったこともない以上、当然料理の仕方も分かっていなかったことがよく分かる。